ULTRAP スペシャルインタビュー
――ULの第一弾リリース楽曲は、2011年4月に無料配信した「By Blow Bye Bye Blow」になるわけですが、もともとどんな経緯でグループを結んだんですか?
MCU:2010年末くらいかな、動き始めたのは。2人でなんかやったら面白いことができるかなって。ソロをやってきて個人的には刺激が欲しかったところもあるし、なんかまた違うこともやってみたいなと感じてて。
LITTLE:俺は、ユウシくん(MCU)がやりたいことを横で半笑いで見ていきたいというか……。昔からそばにいるからユウシくんが家でプリプロした曲とかを聴いてると、これはいい曲なのになぁっていうものがあるし、もちろん俺もやりたいことをやるんだけど、そういうのを薄めずに形にできればいいなと思ってました
――そこから今回のアルバムリリースまで3年かかりましたね。
MCU:そんなに経ったって意識はなかったんですけどね。気づいたらっていう感じで。
LITTLE:制作にじっくり時間をかけたというのはあるかもしれません。
MCU:あと、俺がスタジオに入ってすげえ淡々とひとりでやってた時期があるんです。何を書きたいのか、どんなフロウをしたいのかが結構ごちゃごちゃになっていて、それを整理するためにスタジオに入ったらなんか一曲作るっていうことをやってて。でも毎日のようにやってたから行き詰まっちゃって。で、なぜその呪縛から溶けたかというと、LITTLEと会って、たわいもないバカ話とか曲のテーマとか話していたら「これでいいんだ」って気が楽になっちゃった(笑)。そこで話したことがすごいでかかったと思います。
――「ンンー」と息詰まってた時期に原型が生まれたのは?
MCU:「STEP BY STEP」。「La vie e'n Rose」もそう。この2曲は、ありもののビートにラップしてたのをKREVAが熊井吾郎にフロウだけ渡して、全体のイメージができあがった曲。ラップ先行の曲なんです。
――では、その転機になったときに書いたのは?
MCU:「祭り feat. TSUBOI(アルファ)」。これはお題がないっていうのがでかかった。KREVAから意味なくただラップしまくるっていうアイデアでもらったトラックを聴いて、火が付いたというか書きてぇ書きてぇって。なんもテーマがないと書けないかなと思ったら意外とスラスラ書けて、この辺からいい感じになっていった。
――アルバム作りでは大きなコンセプトやテーマを設けたんですか?
MCU:トータルなコンセプトは特にないですね。
LITTLE:そうだね。
MCU:今回はコンクリートジャングルだよ(笑)。
LITTLE:奇遇、俺もそう思ってた(笑)。
MCU:あんまりコアなことをやっても、っていうことは意識しましたね。特にリリックはできるだけ伝わりやすいように書いてます。言葉のチョイスはこだわったかな。
――KREVAをトータルプロデューサーに迎えた理由は?
MCU:いい意味でインパクトがあるし、ULにとってのデビューアルバムだから、それくらいどーんとやってもいいんじゃないかなって。それと俺たちのことをよく知っているし、信頼もしてる。トラックも本当にいいのを作るし、すごく理解してくれているし、なにより俺たちの魅力を引き出してくれると思ったから。あと「挑め Remix feat. MCU & LITTLE」があって、3人でレコーディングしたときに手応えも感じていたから、その流れっていうのもありますね。
――アルバムを制作していて、互いに刺激的だったことは?
MCU:やっぱ発想かな。ライムの切り口っていうか。俺はどっちかというと直球に書くけど、LITTLEはいい意味でひねくれてる。サビを一緒に考えて作る曲もあったけど、たとえば「La La Like a Love Song」は、サビで「ずっとあなたがあなたがあなたが笑うんだったら」って書いてきて、最後どうしようか?って言ったら「できるだけ」って出してきて。俺は「できるだけ」ってあんま使わない。なんでできるだけなんだよ、ちゃんとやれよとか思っちゃうから(笑)。そういうのを聴いて、いいヴァイブスもらったな。
――反対にLITTLEさんは?
LITTLE:ユウシくんがサビを先に取りかかってた曲で、たとえば「STEP BY STEP」とか「La vie 'en Rose」は、普段あんまりしないストレートな物言いで作れて良かったなって。そういうちょっと男らしいものが多くなってる気はする。今回は普段の自分よりちょっと強気な感じがあるかなと思います。
――リード曲の「La La Like a Love Song」は、こみあげ系のアッパーチューンで、ライブでお客さんが手を挙げてジャンプしてる様が浮かびました。これはどんな風に作っていったんですか?
LITTLE:最初は違うビートにユウシくんと俺が乗せたものがあったんだけど、その曲は一旦保留になってて。しばらくしてKREVAから「こんなのがいいんじゃないかな」ってビートをもらって、KREVAにサビメロをお願いして、そのメロディに歌詞を乗せました。
MCU:歌詞は聴いてくれる人に向けてのラブソング。どんな曲でもすべてに聴いてくれる人への愛があるぞっていう。
LITTLE:この曲のレコーディングは、俺がKREVAに歌を誉められるっていうハンパない奇跡が起きたから。超機嫌良く帰りました。いいお酒が飲めました(笑)。
――アルバムタイトルの『ULTRAP』と1曲目の「UL-TRAP」、2曲目の「ULTRA-P」は見事なアナグラムですね。
LITTLE:それは、あと何曲で完成だっていうときにKREVAが「『ULTRA-P』、もしくは『ULTRAP』、もしくは『UL-TRAP』はどうかな?」って。「思いついたんだけど、このタイトル」ってまずはアルバムタイトルのイメージで3つワンセットで出してきたんですよ。すげえ発明をした、このトリプルミーニングはヤバいでしょ、ぐらいの勢いで(笑)。
――1曲目の「UL-TRAP」は、トラックのジャンルがTrapで、且つ、歌詞を読むと罠という意味のTrapにもかかってることがわかる。
MCU:この曲も先にラップが先にあって、そのラップを使ってKREVAがトラック作ってできた曲です。歌詞はそんなにシリアスに書いたつもりはないんですけどね。固く言えば、いろんなものが世の中に最近ありすぎて、本当のやさしさっていうのがわかりづらくなってるなと。だけど絶対にあるし、だからこそ明日があると信じたい。そんなイメージで書きました。
――反対に「ULTRA-P」は、観客とのコール&レスポンス・パートも入ってる爽快なフロアチューンで。
LITTLE:この曲は、KREVAに疾走感のある「Have a nice day!」みたいなライブで盛り上がる曲があったらいいな、と依頼して「簡単にできないよ!」って言われたけど、2日位で「できた!」ってKREVAからトラックをもらって。その後に「P」が付く言葉をいっぱい言うっていうおもしろな曲を作ろうって話して、できた曲なんだよね。
MCU:そう、単なるバカ騒ぎしよう、パーティーしようっていう曲。LITTLEは全部最後「ピー」でライミングしてて、俺は頭に「ウルトラ」をつけてラップしてて、ウルトラポジティブとかウルトラパスザマイクとか、そういう言葉遊びをしてる。KREVAは「あれ、ウルトラプロデューサーは?」って言ってたけど、それは言わないですよね(笑)。
LITTLE:自分で言わなきゃ、言ってあげたのにね(笑)。
MCU:それはあるかもしれない(笑)。
――中盤の「STEP BY STEP」「夢の中へ」「寄り添う」「HOME TOWN」は、“聴かせる”系の真摯な面持ちの曲ですね。特に2人のこれまでとこれからが描かれた「夢の中へ」からは2人の絆、誓いにも似た情熱が感じられました。
LITTLE:これはULをやろうとしたとき、俺が一番初めに作ろうとした曲で、それこそULで最初に作った曲。一番古いから初心に近いんだろうね。初心表明でもあり、所信表明でもあるっていう。
――「STEP BY STEP」でMCUさんが《俺が君のヒーローになる》と書いていますが、「UL-TRAP」や「La La Like a Love Song」の1ヴァース目など、今回のアルバムのメッセージの届け方にはヒーローイズムを感じたんです。「寄り添う」もそうだと思うし、そこがULの作風のポイントかなと思ったんですが。
MCU:そういう自覚はしてなかったけど、言われてみればヒーローイズムはずっと昔から俺にあるのかもしれない。自分と関係がある人になんかやってあげるんだったら、俺がやってあげたいっていうイズムは強いかも。でも、俺が一番目立ってやるとかそういうイズムじゃないんですけどね。厚かましいヒーローにはなりたくないし。
――そう。そういうイズムにLITTLEさんのちょっとひねくれた目線とか平熱感が入ってくるのがULの絶妙バランスだなって。助けてくれるのはうれしいけど、行き過ぎると余計なお節介でウザイですから(笑)。
MCU:LITTLEはそういう部分を持ってるんですよね。「sayonara sayonara」(KICK THE CAN CREW)もそうだけど、《さよなら さよなら》《俺の嫌いなところだけ》って言っちゃうところがあるから。余計なお節介すらいいイメージに崩して面白おかしく書けるのがLITTLEなんですよ。俺は「余計なお節介だよ!」って歌詞を書いちゃうから。そこですげえバランスが取れてるんじゃないかと思う。
――最後に、5月17日に渋谷WWWでワンマンライブが決定しましたが、どんなステージにしたいですか?
LITTLE:いい感じに抑えきれないユウシくんが出てくるんじゃないかと思ってます(笑)。お互いにキメ打ちじゃない部分がいっぱい出てくるだろうし、そういうのを制限せず、楽しくやれればいいなと。
MCU:まあ、半年くらいは忘れられないようなライブできれば(笑)。でも、ULはパーマネントなグループとしてやっていくので、次作の構想もちょいちょい話してます。だからこそ、そこに繋がるようなライブにしたいです。
猪又 孝(DO THE MONKEY)